AI万能論の陥穽

3度目のAIブーム。曰く、「人間の役割を代替していく」。「2045年には人間の知能を超える」。受け止め方(ポジ/ネガ)は人によるが、既存の技術をAIと組み合わせることによって、新たな課題解決の可能性が広がる、という点は広く共有されているようだ。

私も、その方向性自体は否定しない。ただし、気になるのは、AIの現在地点がどこにあるのか、その上で、いつまでに何が起こるのかを正確に理解された上で議論をされているか、だ。例えば、「AIを使えばいい」「AIによって解決できる」といった類の論調には、AIの現在地点に対する関心が薄いきらいがある。

 

先日、Botを使った支援ツールの開発者に話を聞いた。かくいう自分もAIの仕組みや現在地点を正確に把握している人間ではなかった。AIの機能を理解するために、まず「物事の解決」の具体例に沿ってみてみよう。極めてシンプルな例として、子供が何かを求めて、その答えを探すシーンを思い浮かべてほしい。

子供:「お腹ついた・・・」

親:「お腹すいたね。クッキー食べようか」

これをAIに置き換えると、

①「お腹ついた・・・」から、「空腹である」ことを認識。

【AIが自然言語の揺らぎを補正】

②「空腹である」場合の解決策として、「クッキー」を特定。

(1)【if"空腹である", then "クッキー"】

(2)【if " 空腹である", then "X" (データベースより抽出)】

 

巷で言われているのは、(2)のようなデータベースから答えを抽出するAIであり、しかもその過程を通じて、その精度を高めていくというものだが、実際には精度の高い答えを出すには、(1)のような形で事前にプログラムされている方が効率的である。また、精度を高めていくには、出した答えに対するフィードバック(○×)のプロセスが必要である。

 

結論から言うと、現時点での多くのAIは、①の部分、質問をデータベース上のQのうちのどれに一番近いかを特定することに使われているので、自律的に答えを探したり、その精度を高めたりはしない。したがって、なんらかの課題を投げ込んだら、自律的に成長していくというのはかなりミスリードだ。

 

この点を理解しないと、ものすごいスピードであらゆる課題が解決されていく、人間が不要になっていくという誤解を招く。